2018/08/10 | 鶏節(とりぶし)

これが、料理人注目の新しいUMAMI! <鶏節(とりぶし)>完全解説

こんにちは。丸眞の代表の眞邊です。

今、食品業界で注目されている新しいうまみのもと「鶏節」をご存知でしょうか。

端的に言うと、鶏節とは鰹節のように鶏を加工して削ったもの。ふわふわと鰹節のような見た目ですが、あっさりとしつつまろやか、やさしく深い味わいに頰がほころんでしまいます。その美味しさの理由は、鶏節にギュッと凝縮された旨味成分「イノシン酸」と「グルタミン酸」。節にすることで、鶏が持つ豊富な旨味を余すことなく効率的にいただけるわけです。

この鶏節で出汁をとったものがラーメンのスープになったり、イタリアンで使われたり。食のジャンルを問わずさまざまなシーンでじわじわと話題となっています。

 

出汁をとってスープにしてもよし、料理の仕上げとしてトッピングに使うもよし。

使い方次第でさまざまな料理に使える万能なUMAMI「鶏節」。

 

この鶏節がどのように生まれたのか、どんな旨味の特徴があるのか、今回のブログでは鶏節に関する基本的な情報をご紹介したいと思います。

 

 

 

 

 

 

目次

 

1. 鶏節って何?

  1-1.  多くの飲食店で話題の「鶏節」とは?

  1-2.  鶏は肉類としては日本人が長く親しんできた食材

 

2. UMAMIとは何か?

 

3. 鶏節のつくり方

  3-1.  鶏節はどうやって生まれたのか

  3-2.   鶏肉は、動物性の肉類では節にするのに最も適しています

  3-3.  鶏節の原材料の鶏胸肉には栄養素がたっぷり

  3-4.   伝統的な鰹節製法を鶏肉に応用する

  3-5.  鶏節の旨味は過熱がカギになる

 

 

 

 

. 鶏節って何?

 

テレビなどで紹介されたり、ラーメン店やレストランなどで使われたり、最近では目にすることも多くなってきた鶏節。でも、やっぱりみなさん、よくわかっていないのが実情だと思います。

それも当たり前です。鶏節の「節」としての歴史は、まだ出来たてのホヤホヤ。これからさまざまなレシピが和洋中どの料理にも関わらず開発され、鶏節の研究や可能性がさらに広がっていくことと思います。丸眞も良質な鶏節を業務用として取り扱っているのですが、さまざまな料理に活用されることで、鶏節の新しい美味しさに出会えるのを自分自身が一番楽しみにしています。

 

あらためて、鶏節ってどういうものなのでしょう?単に鰹節の鶏バージョン?味は鰹節とは違うのか?…などなどいろいろな疑問があるかと思います。

まずは、基本のきからお伝えしていこうと思います。

 

 

1-1 多くの飲食店で話題の「鶏節」とは?

鶏節は、最近、和食店のみならずラーメン店やフレンチやイタリアンのお店でも、注目の

新しい旨味です。

 

削った鶏節でサッと出汁を取ると、とても短い時間で鶏の旨味の濃い、出汁が取れます。

 

「節」という言葉が着くことで分かるように、伝統的な鰹節の製法を使って鶏を加工してできた新しい「節」の仲間です。

 

鰹節は、内臓の処理後に釜で煮、焙乾をくり返します。本枯節は、さらにカビを付け天日干しの作業をくり返し、熟成を重ねます。

この伝統的な鰹節の製法は、日本の長い歴史の中で日本人が生み出したもので、魚の旨味を保ちながら、どのように保存するのかという試行錯誤の上につくられてきました。

節にすることで半年や1年などと食せる期間が格段に延び、さらに旨味も増すのだからいいことずくめ。

「節」は鰹を筆頭に、サバやまぐろ、さんまなど魚の肉に使われてきた技法なのですが、近年研究開発が進み動物性のお肉の「節」として「鶏節」が誕生しました。

鶏は節にすることで、鶏がもともと持っている旨味成分であるイノシン酸、グルタミン酸が凝縮され、とてもいい旨味が出るのです。

 

濃厚ながら上品な旨味で、幅広い料理に使えるのが特長で、私たち丸眞にもお客様からの問い合わせが非常に多い「鶏節」。

実際に、丸眞の卸した鶏節もしょうゆ味のラーメンから、フレンチでソース代わりのジュレまで、各種料理店のさまざまな場面で使われています。

鶏節を使ったラーメン。さっぱりしながらも旨味が濃いのが特徴

 

 

 

 

 

 

1-2. 鶏は肉類としては日本人が長く親しんできた食材

 

今では当たり前のように食卓によく並ぶ牛や豚ですが、実は文明開化のころまで日本人は4つ足の動物を口にしませんでした。

当時こうした肉はゲテモノと呼ばれて、ゲテモノ屋で売っていた、という話を予備校の先生がしていたのを思い出します。

これら食卓の人気者もつい最近まで食べられてこなかった、むしろ避けられていた存在だったと思うと、ちょっと驚きですよね。

 

では、動物性のお肉は何から取っていたかというと、ズバリ鶏肉です。

日本人は明治初年(1868年)からおおよそ100年ほど後の、昭和40年代(1965~1974年頃)まで、魚を除くと、動物性タンパク質の7割は「鶏肉」と「鯨」から取っていたと聞いたことがあります。

 

鯨は最近では品薄により高級食材となり、見かけることが少なくなりましたが、鶏肉は生産がたやすく、流通も整えられていることから、今も昔も身近な動物性タンパク質として流通しています。

 

江戸時代、獣肉が避けられていたころでも、鶏肉だけは家畜の一種として、また生産のしやすさから頻繁に食べられていました。

 

 

鶏肉とにんじん、ごぼう、長ネギ、きのこなどがたっぷりと入った、青森の鍋「ひっつみ汁」。比内地鶏の出汁が滋味深い秋田の「きりたんぽ鍋」。鴨肉または鶏肉を使い、おめでたい日の料理として親しまれている石川県の「治部煮」。温かいごはんに、しいたけや錦糸卵などをのせ、鶏から煮出した熱々な濃厚スープをかけて食べる鹿児島の「鶏飯」。

このように、日本各地に鶏を使った名物料理があることでも分かります。

 

日本人がとても親しんできた動物性タンパク質である鶏肉を原料としているのが「鶏節」長く親しまれてきた「鶏」の旨味を効率よく、簡単に取ることができるのですから、これは普及しないはずがありません。

日本人のDNAが「鶏節」を求めていた、といったらちょっと大げさでしょうか。いやでも、個人的にはそのくらい「鶏節」誕生の必然を感じています。

 

 

 

 

 

 

 

. UMAMIとは何か?

 

鶏節には、「グルタミン酸」と「イノシン酸」の2つの旨味成分が入っているとお伝えしましたが、そもそも旨味とは何なのでしょうか。

すでにご存知の方も多いとは思いますが、ここで一旦簡単におさらいしておきたいと思います。

 

日本うま味調味料協会の定義では…

—————

うま味とは、5つの基本味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の一つで、独立した味を指す公式の呼び名。「うま味」とは、料理の「おいしさ」を生む大切な役割を果たしています。

—————

とのこと。

 

そう、旨味とは、まさにうまさのもと!

実は、旨味という味の発見はつい100年前のこと。昆布においしさのもとがあるのではないかと、1908年東京帝国大学・池田菊苗博士は昆布の研究を始めたのです。博士は昆布から「グルタミン酸」を抽出、これが昆布だしの主成分であることを発見し、「旨味」と名付けました。

旨味は、日本人が生みの親だったんですね。

続いて、「イノシン酸」も「グアニル酸」もうまみのもとであることが解明され、3大旨味成分が出揃うことになりました。

 

整理すると、3大旨味成分とは、昆布などに含まれる「グルタミン酸」、かつおなどに含まれる「イノシン酸」、干し椎茸などに含まれる「グアニル酸」の3

 

たとえば昆布だけを使うよりも、昆布と鰹の合わせ出汁の方が、おいしさが増しますよね。旨味成分はひとつの成分単体で使うより、掛け合わせる方が旨味の相乗効果で格段に美味しくなります。

 

「グアニル酸」が含まれる乾物食材は少なく、干し椎茸と乾燥ポルチーニくらいのものなので、旨味成分「イノシン酸」と「グルタミン酸」の2つを含む「鶏節」はかなり優秀な旨味食材と言えるのではないかと思っています。

 

 

ちなみに5つめの味、旨味は1985年第一回うま味国際シンポジウムで世界に発信され、英語でも「UMAMI」と呼ばれるようになり、世界共通語になっています。近年、無形文化遺産にも登録された「和食」。それを支えてきたのは「UMAMI」だったというわけですね。

 

 

 

3. 鶏節のつくり方

 

では、旨味成分が凝縮された鶏節はどうやって誕生したのでしょう。

その誕生の秘密に迫るとともに、どうやってつくるのか、製法の秘密にも迫っていきます。

 

3-1  鶏節はどうやって生まれたのか

 

鶏節がどうやって生まれたのか。徳島県のメーカーが開発したとの話もありますが、実は定説はありません。

 

また実用新案などで、この鶏節の製法が守られているわけでもなく、それぞれ鶏節に取り組んでいる企業が独自に、その製法と味を追求しているのが実情です。

 

いずれにしても、食の洋風化にともない、こうした洋の味を支える食材の需要が高まっており、またプロの料理人の要望からも、鶏節はこれから伸びるだろうと思われています。

 

 

 

3-2   鶏肉は、動物性の肉類では節にするのに最適!

鰹節のように「節」にするのは、魚の肉を使うのが常です。鰹、サバ、宗田鰹、ムロアジをはじめ、まぐろやサンマ等もあります。最近ではサメ節なども話題になっていますね。

 

鰹節のように「節」にするには、どのようなモノが適しているのでしょうか?

節に最適なのは、脂の少ないものです。

鰹節屋は“魚質”といって、その身にある脂の量の重きをおいて見ていきます。意外だと思われる方も多いと思いますが、魚のお刺身と違って「節」にする場合は脂が少ないモノを良しとしています

鰹節は時間をかけて製造されるのですが、その時に脂分が多いと酸化して品質を落としてしまうからです。

 

 

では魚以外で脂が少なく、「節」にできるものはないのでしょうか。

 

 

実は私も魚以外に節にできるものはないかと、馬肉など「節」にしてみたことがあるのですが、商品化には不向きでした。味は悪くないのですが、馬肉は水分を多く含んでいることで、燻して乾燥させると出来上がった「節」がごく少量になってしまい歩留まりが悪くなってしまいました。そうなると、販売コストが異常に高価になってしまうという問題が出てきます。もともと馬刺し用のお肉は高級品なので、仮に1/8になってしまうとしたら、その原料の原価から考えてもコストは単純計算で8倍になってしまいます。

 

 

多くのみなさまに使っていただく、ということを考えると安価な「鶏」は節に最適でした。

鶏の胸肉は脂が少なく、「節」に加工するのに非常に適しているのです。

代表的な牛肉や豚肉では、どうしても脂が多く節の製造に適しません。作ったとしても脂でギトギトになってしまうでしょう。

安価で、脂分のすくない「鶏」。さらに、鶏がもともと持っている旨味成分であるイノシン酸、グルタミン酸を凝縮され、とてもいい旨味が出るのですから、まさにつくられるべくしてつくられた「鶏節」といえるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

この表は、鶏肉も含め、たくさんの旨味成分を比較したものです。この表の鶏肉は、生の肉であるため数値は低くなっています。

 

鶏節は、肉の旨味を濃縮していくことで出来あがっていきます。私たちの実感値としても、ほぼ鰹節に匹敵するまで旨味が濃縮されていると思われます。

 

鶏節の原材料は健康に育ったブロイラー

 

 

 

3-3  鶏節の原材料の鶏胸肉には栄養素がたっぷり

 

低カロリーで高タンパク。

健康的にダイエットができるとテレビで取り上げられたり、雑誌で鶏胸肉のレシピ特集が組まれたり、鶏胸肉は健康志向のみなさんに大人気の食品ですね。

近年では最強の抗疲労物質「イミダペプチド」が含まれ、疲労回復に期待できると話題です。疲れを感じるとき、活性酸素が発生して細胞が錆びるのですが、イミダペプチドがその活性酸素の発生を防ぐ効果があるのだとか。

体のサビにまで効果が期待される鶏胸肉、まさにスーパーヘルシー食材といえるのではないでしょうか。

 

食品栄養学的に見ても、鶏胸肉はとても優秀です。

お話ししたように、鶏胸肉そのものが脂肪の少ない、良質なタンパク質のかたまり。

皮を除けば、さらに低脂肪で栄養素が豊富な、非常に健康的な食材です。

鶏節も、この皮は取り除いています。

 

また、食事から取る必要のある必須アミノ酸がバランスよく含まれている上に、消化吸収が良いことでも知られています。

 

加えて、皮膚や目によいビタミンAや、人間が生きていくためのエネルギーに深くかかわるビタミンB群、さらに疲労回復に働くナイアシンが多いのが特徴です。

 

その他、ビタミンKや善玉コレステロールを増やすパンテトン酸なども含まれます。

低脂肪で高栄養だなんて、こんなに優秀な食材はなかなかありません。

 

鶏節になっていく過程で、これらの栄養素は失われることも多いと思われますが、カラダによい良質な素材をベースにつくることには変わりありません。

 

脂肪が少ない高栄養の鶏胸肉

 

 

 

3-4  伝統的な鰹節製法を鶏肉に応用する

 

鶏節は鰹節にヒントを得た製法でつくられています。

 

鶏節は、鰹節の伝統的な製法の応用したものでかび付けなどはありません。

 

鶏を解体し、胸肉など鶏の運動に関わる旨味の濃い部位を「煮る」「不要部分の除去」「焙乾」というステップで進みます。

 

まず、伝統的な鰹節製法を見ていきましょう。

 

[鰹節の製造工程]

①生切り: カツオを解体し、内臓などを取り除く

②釜立て: 籠に入れて釜で煮る。沸騰すると身が傷つくので、煮立たせないようにする

③骨抜き: 取り出した後に冷まし、鱗や脂肪や骨の除去を行う(生利節)

④焙乾:燻蒸して乾燥させる。必要に応じて幾度か繰り返す(荒節)

⑤天日干し: 表面を削って汚れを除き、天日で乾燥させ、水分を取り除く

⑥カビ付け:カツオブシカビを噴霧し(又は優良な天然カビでカビ付け)、閉め切った室でカビで節を熟成させる

⑤と⑥の工程を繰り返す。最終的に水分は加工前の20%以下に。

 

 

鶏節はカビ付けをしないので、この中の①〜⑤までを肉用のステップを応用し、製品化していきます。

そして、旨味のつまった鶏節が完成します。

 

 

 

3-5  鶏節の旨味は加熱がカギになる

 

鶏肉の旨み成分は、イノシン酸とグルタミン酸ですが、この2つは加熱中に変化することが知られています。

 

一般にグルタミン酸などのアミノ酸は、プロテアーゼ(タンパク質中のペプチド結合を切断する酵素)の作用で、加熱中に生成された後、分解されます。

 

イノシン酸はフォスファターゼ(有機燐酸エステル・ポリ燐酸を加水分解する酵素の総称)の作用により加熱中に分解して減少します。

 

それぞれ加熱で増えるものと、減るものがあるということで、加熱法を組み合わせて、イノシン酸とグルタミン酸がそれぞれ減らないようにすることが鶏節の旨味を決定します

 

加熱の仕方によっては旨味が引き出しきれず、薄っぺらい味わいになってしまうこともありますし、鶏の生臭さが残ってしまうこともあります。

 

丸眞では、加熱の実験を繰り返して最適値を発見、鶏のもつ旨味を最高の状態で引き出すことに成功しました。鶏節のもつ旨味は、口当たり柔らかで、丸みのある上品な旨味。でも、ただ口の中を通り過ぎてしまう旨味ではなく、出汁を口に含んでゆっくり味わうと旨味の層がきちんと厚いことがわかる旨味です。

もちろん鶏の臭みなどは全くありません。一方で鰹出汁のような酸味がないので、味の設計も邪魔しません。丸眞ではイタリアンやフレンチなどで和の印象を出したくない場合のために、「鶏節・旨味ブロード」というものもレシピ開発しています。

 

鶏節は、繊細な味付けにも旨味だけを加えることができる万能の節。和食、中華、イタリアン、フレンチ…どんな料理にも合い、旨味を深くしてくれます。

また鶏節を薄く削れば香りが立ちやすく、おかかのように料理の最後のトッピングとして風味づけにも最適です。

これからの時代の万能旨味ともいえる「鶏節」。この「鶏節」の旨味を生かすも殺すも加熱次第、繊細で丁寧な加熱処理がとても大切なのです。

 

 

鶏節は、まだ誕生したばかりの、新しい節類。これから、需要の高まりを受けて、どんどん進化していくのではないかと思われます。

 

その意味でも、私たち丸眞は、鶏節のリーディングカンパニーとして作り方、使い方も含め、さまざまなご提案を行っていく予定です。

このブログやHP内でもお伝えしていきたと思いますので、ぜひチェックしてくださいね。

また、商品の詳しい説明なども含めお気軽にお問い合わせいただければと思っています。

 

 

丸眞の実験的製品シリーズである「UMAMI LABO」で鶏節を扱っております。

http://www.kezuribushi.co.jp/products/umamilabo.html#toribushi

 

 

 

 

 

★参考資料&URL

 

日本調理科学会大会研究発表要旨集

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajscs/19/0/19_0_91/_article/-char/ja/

 

社会実情データ図録

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/0216.html

 

日本うまみ調味料協会

http://www.umamikyo.gr.jp/knowledge/ingredient.html

 

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